蓄電池について

家庭用蓄電池とは、電気を貯めて必要なときに電気機器に供給できる設備です。
これらは「二次電池」と呼ばれ、充電して繰り返し使えます。身近な例として、スマートフォン、パソコン、デジタルカメラ、車やバイクのバッテリーがあります。これらは使い切っても再充電で再利用可能です。
家庭用蓄電池は、蓄電ユニット、パワーコンディショナー、リモコンなどで構成されています。多様なタイプがあり、住宅の状況や電気の使い方に合わせて選ぶことが重要です。

POINT
リチウムイオン電池

現在、家庭用蓄電池の主流はリチウムイオン電池です。この電池は、リチウムイオンがプラスとマイナスの電極間を行き来することで電気を蓄えたり放出したりします。リチウムイオン電池の特徴は、コンパクトでありながら高出力で長寿命な点です。
リチウムイオン電池は私たちの身近なところでも使用されています。たとえば、EVやPHEV、スマートフォンなどのバッテリーに利用されています。

POINT
容量(kWh)と出力(kW)

家庭用蓄電池を選ぶ際の重要な基準の一つが「容量」と「出力」です。
ここでは図を参照しながら「容量」と「出力」の意味を解説します。
「容量」は水のタンクの容積に例えられ、タンクの容積が大きいほど多くの水を貯められるように、蓄電池の「容量」が大きいほど多くの電気を蓄えられます。一方、「出力」は蓄電池から瞬間的に取り出せるパワーを指し、出力が大きいと多くの電気機器に一度に電気を供給できますが、出力が小さいと限られた機器にしか供給できません。「出力」は蛇口の大きさに相当し、出力が大きいほどタンクから多くの水を出せます。

POINT
全負荷と特定負荷の違い

家庭用蓄電池の「全負荷」「特定負荷」は、停電した際にどこまで電気を供給するのかという範囲を示しています。

全負荷の蓄電池とは

蓄電池で「全負荷」とは、停電時に家庭内のすべての電気を蓄電池から供給できることを意味します。これは、IHクッキングヒーターやエアコンなどの200V機器にも電力を供給できることを含みます。家庭全体に電気を供給するため、蓄電池の容量は大きくなります。
ただし、「家庭内すべて」とは範囲を示しており、実際に使用できる最大の電気量は蓄電池とパワーコンディショナーの最大出力によって決まります。

特定負荷の蓄電池とは

「特定負荷」とは、停電時に特定の部屋などにのみ蓄電池から100Vの電気を供給することを指します。製品やメーカーによって異なりますが、15〜20A相当のブレーカー1〜2回路分の電気を供給するイメージです。停電時に特に必要な回路に限定して電気を送ることになります。

家庭用蓄電池の
設置について

家庭用蓄電池は、太陽光発電やV2Hなどの設備と組み合わせて使用することが多い設備です。何の設備との組み合わせかで仕組みが異なり、設置の仕方も変わります。ここでは、4つのタイプ別に家庭用蓄電池を解説します。

「単機能型」の家庭用蓄電池は、内蔵のパワーコンディショナーが蓄電池のみに作用します。一見当たり前のようですが、非常に重要なポイントです。太陽光発電と併用する際には、「単機能型」では太陽光発電用にも別途パワーコンディショナーが必要となります。
つまり、蓄電池と太陽光発電を併用する場合、それぞれが独立したシステムとして構成されるのです。

単機能型のメリット

「単機能型」のメリットは、太陽光発電のメーカーと蓄電池のメーカーが異なる場合でも設置しやすいことです。また、太陽光発電を先に設置し、その後に蓄電池を追加する際にもよく選ばれます。設置費用も「ハイブリッド型」より安くなることがあります。
ただし、「単機能型」は太陽光発電から蓄電池に電気を貯める際、パワーコンディショナーを2回経由するため(直流→交流→直流)、変換ロスが大きくなるデメリットがあります。また、2台分のパワーコンディショナーを設置するスペースが必要なため、スペースが限られた住宅には適さない場合もあります。
一部のメーカーは、全負荷と特定負荷の両方の単機能型蓄電池を提供しています。自宅の設置条件やライフスタイル、蓄電池に求める機能を明確にして選ぶと良いでしょう。

「ハイブリッド型」の家庭用蓄電池は、「パワーコンディショナー」の構造に大きな違いがあり、1台で太陽光発電と蓄電池の両方を動かすことができるのが特徴です。

ハイブリッド型のメリット

「ハイブリッド型」のメリットは、電気の変換ロスを抑えられる点です。太陽光発電で生成された電気を交流に変換せず、直流のまま蓄電池に貯めることで、変換ロスを最小限に抑えて効率的に利用できます。電気を効率よく使いたい人には最適です。
しかし、デメリットもあります。単機能型と比べて価格が高い場合があり、既に太陽光発電を設置している住宅に追加する場合、条件によっては導入が難しいことがあります。事前に販売・施工会社に確認する必要があります。

太陽光発電、蓄電池、V2Hを1台のパワーコンディショナーで制御する「多機能型」があります。製品の種類はまだ少ないですが、停電時には家庭全体に電力を供給できるため、非常時の安心感も高まります。

多機能型のメリット

「多機能型」のメリットは、太陽光発電・蓄電池・V2H間をすべて直流で接続することで変換ロスを抑えられることです。EVで外出中も蓄電池があるため、太陽光発電で作った電気をしっかり蓄え、自家消費を最大化できます。また、現在EVを所有していなくても、将来EVに買い替えた際にV2Hを後付けできる拡張性も便利です。
近年、太陽光発電、蓄電池、EVの3つの電源を制御するパワーコンディショナーを含む「多機能パワコンシステム」が開発されました。このシステムでは、AIを活用して家全体の電力使用を最適にコントロールし、電気代の最小化などの効果が期待されます。

電力会社の系統に接続しない「スタンドアロン型」というタイプの家庭用蓄電池です。このタイプはアウトドアで使用されるポータブル蓄電池に似ていますが、主に屋内で使用され、ポータブル蓄電池より容量が大きいものが多い点が異なります。しかし、「単機能型」や「多機能型」と比べると、充電できる容量は小さくなります。

スタンドアロン型のメリット

メリットは、家庭のコンセントに接続して充電できるため、大規模な設置工事が不要な点です。マンションなどでも簡単に導入できます。また、基本的には蓄電池本体にあるコンセントに使用したい電気機器を差し込んで使用する形になります。

電力会社から購入した電気

電力会社から購入する電気には、各社が設定した料金単価があります。
たとえば、エコキュートをお持ちで夜間の電力料金単価が安いプランに加入している場合、夜間に蓄電池に電気を貯めておき、料金単価が高い日中に利用することで、電気代を節約することができます。
また、災害対策として一定量の電気を蓄電池に貯めておくことも有効です。

太陽光発電などでつくった電気

太陽光発電で電気を作る場合、設置やメンテナンスにコストがかかりますが、環境に優しくCO2を排出しません。長期的には経済的であり、電気代の高騰によりさらに経済効果が大きくなります。
太陽光発電の経済性を高めるのが蓄電池です。蓄電池を導入すれば、余った電気を蓄えて夜間や雨天時に利用できます。
また、災害時には太陽光発電で作った電気を蓄電池に貯めることで、停電時でも昼夜問わず電気を使えるようになります。

蓄電池と太陽光発電を組み合わせることで、発電した電気をより効率的に活用できます。蓄電池は、災害時の安心感を提供するだけでなく、環境に優しく経済的な生活をサポートする優れたアイテムです。